2次元量子状態の時間発展

投稿者: | 2017年6月5日

  • 2次元で表される二つの直交した量子状態の間の遷移を考える
  • ユニタリ性による制約から、非重ね合わせ状態から状態が変化する確率は始状態によらない

ユニタリ変換

量子状態の時間発展はユニタリ変換\(U : \psi \rightarrow \varphi\)で表される。 特に、2次元の量子状態を考えると、\(U\)\(2\times 2\)のユニタリ行列であり、 これは、\(U^* U = U U^* = I\)を満たす複素行列として定義される。 ただし、\(U^*\)\(U\)の共役転置行列(随伴行列)である。

成分表示

\[
\newcommand\ket[1]{|{#1}\rangle}
\newcommand\bra[1]{\langle{#1}|}
\]

今、基底\(\ket{T},\ket{F}\)を次のように固定して成分表示を行うこととして、 \[
\ket{T} = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}, \ket{F} = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}
\]
ユニタリ行列\(U\)\[
U = \begin{pmatrix}
a & b \\
c & d
\end{pmatrix}
\]
と表すこととする。

重ね合わせ状態

宝くじが当たったかどうか(例は重要ではない)の、真偽を\(\ket{T},\ket{F}\)で表すとすると、 それらの重ね合わせ状態 \[
\ket{\psi} = p_T \ket{T} + p_F \ket{F}
\]
は、真である確率が\(|p_T|^2\)、偽である確率が\(|p_F|^2\)であることを表している。

重ね合わせでない\(\ket{T},\ket{F}\)\(U\)を作用させると、次のような重ね合わせ状態になる。 \[
U\ket{T} = a \ket{T} + b\ket{F} \\
U\ket{F} = c \ket{T} + d\ket{F}
\]
これから、真から真に移る確率が\(|a|^2\)で、真から偽に移る確率が\(|b|^2\)であり、 偽から真が\(|c|^2\)、偽から偽が\(|d|^2\)に対応していると考えることが出来る。

ユニタリー性の制約

\(U\)の成分\(a,b,c,d\)はユニタリ―性(\(UU^* =I\))から制約を受けている。 \[
U U^* = \begin{pmatrix}
|a|^2 + |b|^2 & ac^*+bd^* \\
ca^*+db^* & |c|^2+|d|^2
\end{pmatrix} = I
\]
すなわち、 \[
|a|^2 + |b|^2 = 1 \\
|c|^2 + |d|^2 = 1 \\
ac^* + bd^* = 0
\]
である。1つめと2つめの条件は、真と偽の確率の和が1であるという確率保存の法則に対応しており、特殊な制約ではない。 3つめの条件から絶対値について \[
\begin{align}
|a|^2|c|^2 &= |b|^2|d|^2 \\
&= (1-|a|^2)(1-|c|^2) \\
&= |a|^2|c|^2 +1 – |a|^2 – |c|^2 \\
&= |a|^2|c|^2 + |b^2| – |c|^2
\end{align}
\]
であるから、\(|b|^2 = |c|^2\)となる。 これは、真から偽、偽から真に移る確率が等しいことを表している。 また、真から真、偽から偽に移る確率も等しく、\(|a|^2=|d|^2\)であることもすぐに分かる。

まとめ

位相を無視して推移確率だけを考えると、2次元量子状態の時間発展では、 \[
P(T \rightarrow T) = P(F \rightarrow F) = P_{stay} \\
P(T \rightarrow F) = P(F \rightarrow T) = P_{change}
\]
であり、推移するか留まるかの確率は\(T,F\)によらず一定となる。 (\(T\)の方が\(F\)よりも留まりやすい等の性質は現れない。)


 

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