量子ゼノン効果

投稿者: | 2017年6月9日

概要

  • 量子ゼノン効果について紹介
  • 観測され続けていると動けなくなる現象

ゼノンのパラドックス(古典)

量子ゼノン効果に移る前に、有名なゼノンのパラドックスを思い出しましょう。 ゼノンのパラドックスの例はいくつかありますが、ここでは矢のパラドックスに焦点を当てます。

次のことを考えてみましょう。

的に向かって飛んでいる矢を考えます。
ある一瞬の瞬間だけを切り取って見ると、矢は静止している。
矢の動きは、瞬間を隙間なく連続して並べたものなので、
静止した矢の並び、つまり、矢は静止している。

矢は飛んでるはずなのに、矢は止まっている、大雑把に言って、これが矢のパラドックスです。

不思議な感じですが、実はそんなに不思議なことではありません。 ある一瞬を切り出すという操作は、矢がどこに向かって、どのくらいのスピード進んでいるのかという運動の情報を欠落させてしまいます。 情報の欠落した一瞬をそのままつなげても元には戻らないというある種、当たり前のことを述べていると見ることができます。

量子ゼノン効果

\[
\newcommand\ket[1]{|{#1}\rangle}
\newcommand\bra[1]{\langle{#1}|}
\newcommand{\bracket}[2]{\left\langle #1 \middle|#2 \right\rangle}
\]

量子の世界で上の矢のような話を考えると、不思議なことが起こります。

ある一定の時間 \(T\) で、量子の状態が \(\ket{0}\) から \(\ket{1}\) に変わるという状況を考えます。 時間 \(T\) の間に \(N\) 回の観測を等間隔で行うこととして、\(i\) 回目の観測を行う時刻を \(t_i = \frac{T}{N} i\) とします。 \(T\) より短い間隔では、状態が移りきらず、\(\ket{0}\)\(\ket{1}\) の重ね合わせになります。 従って、各観測では、0 または 1 が確率的に観測されます。

さて、この状況で、\(N\) を大きくして観測を細かく隙間なくするとどうなるでしょうか。 これは、ゼノンのパラドックスで瞬間を切り取ってみて、その瞬間を隙間なく並べていくことと似ています。 矢の例で考えれば、観測をいくら細かく行っても矢が動いていることには変わらないはずですが、 量子の場合、観測を細かく行うと、実際に止まってしまうのです。 これを量子ゼノン効果と言います。

シミュレーション

それでは、シミュレーションで動きを見てみることにしましょう。 \(T=1\) の時間で状態が \(\ket{0}\) から \(\ket{1}\) に移る状況を考えます。 時間 \(t=\frac{T}{N}\) の間の状態の時間変化は、\(U^{\frac{t}{T}}\) で、\(t=T=1\) の時に、\(\ket{0},\ket{1}\) を反転させる操作となります。

下の図に、\(N\) を増やしていった時の、\(i=1,\cdots,N\) 番目の観測値 0,1 をプロットしています。 左上には、\(t=1/N\) を表示しています。 図を見ると、\(N=5\) の時は、観測値 1 が 3 回観測されていますが、\(N\) が増えるにつれて、観測値 1 が観測されないようになり、0 に留まっていることが分かります。 このように、量子の場合には、観測を細かく行うことで、実際に状態の変化が止まってしまいます。

メカニズム

それでは、なぜ量子の状態変化が起こらなくなったのでしょうか。 簡単に言ってしまうと、量子は観測されるたびに、\(\ket{0},\ket{1}\) に移るので、 状態変化が、観測の度にリセットされるからです。

下に観測せずに放って置いた場合の遷移を示しています。 一つの矢印の間は丁度 \(t=0.1\) の時間間隔での遷移を表しており、\(10t = 1\) の時間をかけて、\(\ket{0}\) から \(\ket{1}\) に遷移します。 もちろん、\(10t\) 経過してから観測すると確実に 1 が観測されます。

\(t=0.1\) の間隔で観測すると、最初の観測は \(\ket{0}\) の隣の矢印に移るので、高確率で 0 を観測します。 すると、矢印はまた \(\ket{0}\) に戻り、次に観測するときも同じく \(\ket{0}\) の隣の矢印の状態にいることになります。 このように、観測される度に、状態が\(\ket{0}\) にリセットされるため、頻繁に観測すると、\(\ket{0}\) の近くの状態で何度も観測することになります。 その結果、状態は \(\ket{0}\) 近くに留まり続け、0 を観測し続けるということになります。


 

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